
↑ 北側から見たトーチカ
勇払平野の防御陣地において、上部に観測所が設けられたトーチカはいくつか残存しているが、他はすべて屋根のない露天型観測所であり、屋根までコンクリートで覆った観測所を併設するトーチカは、この1か所しか残っておらず、極めて貴重である。観測所の右側に写る、蟹の眼柄のように突き出しているものは通気筒。
日本ホワイトファーム㈱ 札幌事業所 食品工場の敷地出入口付近に、厚和トーチカ3が残存している。
この工場では、2019年頃、敷地出入口付近に新たな従業員専用駐車場を整備する際、「可能であれば、貴重な近代遺跡であるトーチカを残してほしい」という厚真町からの願いを聞き入れて、道道1046号線からでも観察できるよう、現在の姿での保存を決めた。
歴史的環境に配慮し、地域社会へ貢献する日本ホワイトファーム㈱ の姿勢は、まさしく「企業の社会的責任(CSR)」を果たしていると言えよう。同社はニッポンハムグループの養鶏事業を担っているそうだ。たくさん鶏肉を食べて、同社を応援したい。
同社の衛生管理に迷惑をかけぬよう、トーチカを見たい方は、工場敷地内には立ち入らず、近くの歩道上からの観察にとどめていただきい。

↑ トーチカの構造
↑ 西側から見たトーチカ
土砂で覆われて視認できないが、砲眼部分は、高低射界の大きい(+45°~-10°)九四式山砲用に縦幅が大きく設計されている。
↑ トーチカ上部に設けられた観測所と通気筒
↑ 南東側から見たトーチカ(背面出入口)
次の写真と比較すると分かりやすいが、上部を覆っていた土が取り除かれている。駐車場整備に伴う発掘調査によるものと思われる。出入口部分は板で塞がれている。
↑ 上部を土が覆っていた頃のトーチカ(背面出入口)
通気筒や観測所の存在が分からないくらいに、カムフラージュされていた。
↑ 上部を土が覆っていた頃のトーチカ(背面出入口)
出入口に扉を付けて、物置として使われていた。
↑ トーチカの内部
当時、許可を得て撮影。物置として使うために、砲眼部分は塞がれていた。ホイール付きタイヤのはまっている場所が駐鋤溝。現在は、出入口部分を板で封鎖しており、内部を見学することはできない。

↑ 九四式山砲
1934年(昭和9年、皇紀2594年)に試製され、翌年に制式制定された小型の大砲。
それまでの主力山砲だった四一式山砲に比べて、威力が増大し、高低射界、方向射界ともに拡大されているが、砲重量は約4kg軽量化されている。方向射界が40°と大きいため開脚式となり、駐鋤は凍結地における射撃準備を容易に行えるよう打ち込み式になっている。対戦車用成形炸薬弾である二式穿甲榴弾を用いて、米軍のM4中戦車を撃破することが可能であった。
口径 75mm 砲身長 1,560mm 砲重量 536kg 高低射界 +45°~-10° 方向射界 左右各20°
初速 392m/秒 最大射程 8,300m 弾量/弾薬筒量 3.95kg/5.00kg(二式穿甲榴弾)
繋駕砲車の全長 4,000mm 車轍間隔 1,100mm
※画像はWIKIMEDIA COMMONSより引用。
↑ 鹵獲され、ロシアのモスクワにあるМузей Победы(勝利博物館)に展示されている、九四式山砲