
↑ 歴舟川河口南トーチカ2の内部
十勝海岸の防御陣地に数多く残るトーチカは、そのほとんどが機関銃用であるが、この「歴舟川河口南2」は火砲用のトーチカである。
◇現地案内・情報提供:大野文明様
十勝地方の戦争遺跡を調査されている大野文明様に現地を案内していただきました。ありがとうございました。
大樹町旭浜の砂浜に、海岸浸食により剥き出しとなった幾つものトーチカが転がっている。この内最も北側にある「旭浜1」から北西約160mの位置に「歴舟川河口南2」が残存している。(マップ上のピンの位置に残存している。)
空中写真で確認すると、段丘面の縁がU字型に掘削されており、川に向かって左側にトーチカ、右側に露天砲座らしきものが築かれていることが分かる。

↑ 歴舟川河口の南側におけるトーチカの配置


↑ 段丘崖と砲眼
↑ 砲眼

↑ 砲眼から見たトーチカの内部
火砲用のトーチカではあるが、勇払平野の防御陣地に築かれたトーチカのような、砲側弾薬庫は設けられていない。
↑ トーチカの背面に接続している交通壕

↑ 背面出入口

↑ 背面出入口から見たトーチカの内部
火砲の特定が難しい。サイズの小さなトーチカであるため、「九二式歩兵砲」か「九四式三十七粍砲」あたりかと調べてみたところ、火砲が小さすぎて前側溝と駐鋤溝の間隔が合わない。「九四式山砲」(放列砲車の全長3.77m)だとすると、砲身を砲眼から突き出すならば収まるが、ギリギリすぎて余裕がない。土砂で覆われているため未確認であるが、駐鋤溝が左右につながっているならば「四一式山砲」(放列砲車の全長3.38m)の可能性もあるが、そもそも貴重な山砲をここに配置するだろうかとの疑念が残る。「一式機動四十七粍砲」だと横幅が出入口より大きいため搬入できない。
※当時の陣地築城に関わる情報をお持ちの方や、火砲の寸法に詳しい方など、火砲の特定につながりそうな情報をお持ちの方は、情報をお寄せいただけると助かります。
◇大野文明様による計測データ
室内は北東向きの台形・・・砲眼側の壁の横幅:146cm 背面側の横幅:406cm 奥行:350cm
室内高:168cm 砲眼:縦80cm×横113cm 背面出入口の幅:160cm
前側溝・・・砲眼のある壁からの距離:45~55cm(10cmの前後幅)、深さ:1.5cm
駐鋤溝・・・前側溝からの距離:234cm


↑ 駐鋤溝
覆っていた土砂をよけると、射撃時の反動を受け止める駐鋤を食い込ませるための溝の一部が確認できた。

↑ 内部から見た砲眼
天井には通気口、床面には火砲の車輪を置くための溝が確認できる。
↑ 射界