汐見海岸トーチカ1

Shiomi-Seashore Pillbox 1


↑ 西側から見たトーチカ

 鵡川漁港すぐそばの住宅地に、トーチカ1基が傾いた状態で残存している。2003年9月に発生した十勝沖地震の影響で傾いたらしい。勇払陣地のトーチカの多くは鉄筋が入っておらず、浜厚真海岸や鵡川河口のトーチカが地震や侵食等で自然崩壊したことを考えると、傾いたままの保存は危険と思われる。
 しかし、勇払陣地のトーチカの多くが失われた現在、残り少ない貴重な戦争遺跡として永久保存が望まれる。願わくは、倒壊を防ぐために水平な状態にしたうえで、史跡公園として整備し、学習教材や観光資源として有効に活用していただきたい。


↑ 鵡川漁港へ向かう舗装道路から見たトーチカ

↑ 北西側から見たトーチカ

↑ ゴミで塞がっていた銃眼(2005年撮影)
 当時は、トーチカ内部が完全にゴミ屋敷と化していた。銃眼部分から見える「新巻鮭」の文字に、シュールな印象を受けた。


↑ ゴミが取り除かれ、スッキリした銃眼
 鵡川河口付近の砂浜から上陸する敵を、九二式重機関銃で狙えるように、銃眼は西北西側に設けられている。

↑ 九二式重機関銃
 1932年(昭和7年、皇紀2592年)に開発され、翌年制式採用された重機関銃。遠距離での命中精度が高かった。
 口径7.7mm  銃身長721mm  全長1155mm  重量55.3kg(三脚含む)  装弾数30発(保弾板)
 発射速度450発/分  最大射程4100m
 ※画像はWIKIMEDIA COMMONSより引用。

↑ 北側から見たトーチカ


↑ 側面(海と反対側)に設けられた出入口

↑ トーチカの内部(出入口付近)

↑ トーチカの内部
 前回の調査時は、発泡スチロール容器等のゴミが天井付近まで積み重なり、内部を撮影することができなかったが、今回は重機関銃用の台座と銃眼を確認できた。

↑ 九二式重機関銃のグリップを握る射手(射撃姿勢の参考)
 ※画像はWIKIMEDIA COMMONSより引用。

↑ 南側から見たトーチカ


↑ むかわ町汐見のトーチカの配置
 1975年撮影の空中写真に、現在の海岸線を合成した。
 図中のトーチカのうち、「汐見海岸2」はすでに撤去されており、現存しない。「鵡川河口2」・「鵡川河口3」の位置は、完全に海面下となっている。

↑ 撤去されたトーチカ「汐見海岸2」
 九二式歩兵砲用のトーチカ。
 ※画像は、香川正八『太平洋戦争当時の勇払平野の防御陣地』(2001)のP26掲載のものを引用、着色。